虫歯と歯周病は多くの人がかかりやすい病気ですが,風邪など他の病気と違い自然に治ることはありません。そして放っておくと歯を失ってしまいます。しかし,長年にわたり研究が重ねられ,どちらも原因が究明され予防法が確立しつつあります。虫歯は虫歯菌,砂糖を含んだ食品,虫歯になりやすい歯の3要因が関係します。
虫歯菌は歯が生え始める頃の噛み与えなどにより親の口腔から感染すると言われています。虫歯菌が糖から産生する酸が歯を溶かしています。また,口の中に残っていた砂糖からネバネバした物質を作りバイオフィルムを形成して,そこに留まろうとします。それが歯垢(プラーク)です。
しかし,砂糖は細菌の栄養であるだけでなく,我々人間にとっても重要な栄養です。虫歯にならないためには,砂糖を食べないのではなく,食べた後に口の中に残さない=ハミガキをすることが大切なのです。
歯の表面のエナメル質は酸によく溶け,壊れやすい特徴があります。そこで役に立つのがフッ素です。フッ素をエナメル質に作用させると,酸に溶かされにくい歯質になります。つまり歯質が強くなるのです。
歯周病は歯の周りの組織に炎症が起こっている状態を言います。歯周病のなかでも最もポピュラーな成人性歯周炎には中高年の8割もの人がかかっていると言われています。歯周病には多くの細菌が関与していると言われており,歯周ポケット内に生息している細菌の出すガスは口臭の原因にもなります。
歯周病は歯肉が腫れたり出血したりします。そのまま進行すると歯が揺れはじめ,噛むと痛みが出たりもします。重症化すると歯が抜けてしまいます。
歯周病の治療の基本はプラークコントロールになります。歯石を取り除き口腔内の環境を整えましょう。軽症の場合はかなりの改善が認められますが,重症例では歯周外科手術が必要な場合もあり,歯を抜かなければならないこともあります。そのため早期発見が重要になるため定期健診が重要なのです。
また,肺がんや心疾患などのリスクファクターとされる喫煙は,歯周病の発症や進行および治療効果の低下に大きく関与することが指摘されています。当院では禁煙を始めようとする方をサポートしています。
歯周病は沈黙の病気と言われていて、むし歯とは違い、症状を外から見ることができない厄介な病気です。普段から気をつけるようにして、歯周病のセルフチェックをすることをおすすめします。
歯をみがいた時に血が出る
歯肉の色が赤い
歯肉がむずかゆい
歯と歯肉の接しているところが赤く腫れている
朝、口の中が粘る
歯の臭いが気になる
歯が長く見える
噛むと痛い
食べ物が噛みづらくなった
歯肉からうみがでる
歯みがきは1日1回、1分程度
歯科医院で定期健診を受けていない
歯がぐらぐらする
歯と歯の間にすき間ができた
全身の病気への影響度が高いことを
しっかりと知ってほしい
歯の少ない人ほど、医療費が高いという相関関係があることが、色々な行政の調査で判っています。歯は食べ物が始めて出会う「消化器」であるだけに、歯を失うと、からだ全体に及ぼす影響が高いのです。さらに、歯周病が全身のさまざまな病気に関わっていることがわかってきています。歯周病菌が全身の病気を引き起こす理由は、歯肉にある豊富な毛細血管にあります。歯周病原因菌が歯肉組織まで侵入してくると、豊富な血管に入り込み、血液を介入して全身にまでまわります。その結果、身体の各部にまで、病気を発症させることになるのです。
その他に、糖尿病・がん・骨粗鬆症・バージャー病・HIVなどに関連性があると証明されています。